15年前、青山通り側の結婚式場に勤めていた私は、原宿駅からケヤキ並木の表参道を通っていました。
坂を下り、明治通りを渡り、坂を上っていく。
そして同潤会青山アパートの前を歩く時、懐かしい人に出会えるような特別な気持ちに包まれたものでした。
植え込みは手入れされて無くて雑草がいっぱい。
咲いてる花や木も自己主張無く自然のまま。
壊れたドア、ガラスの割れた窓、どんな人達が住んでいるのか不思議でならなかった。
でも、恐る恐る階段を上ってみると、綺麗なブティックやインテリアのお店があって、私は時々ふらりとその空間に紛れ込みに行ったものでした。
特にクリスマス・グッズのお店はお気に入り。
可愛い小物がキラキラ輝き、夢の世界に引き込まれる。
小さなお店の中をゆっくり歩きながら、クリスマスの飾り越しに表参道を眺めるのが好きでした。
通りからその窓を見上げるのも好きでした。
あのアパートだけはどんなに老朽化しても、決して取り壊されることなんて無いと漠然と思い、表参道がいつまでも変わらないことを願っていました。
でもそんな希望はただの夢物語。
時の流れは、「表参道ヒルズ」を選んでしまったのだもの。
11日にオープンする目のくらむようなビルは人の心にどんな潤いを与えてくれるのかしら。
それは同潤会青山アパートのあの小さなお店にまさるなんて思えない私です。