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二十歳の誕生日は残暑厳しき折で、私は専門学校生でした。
十代も夏休みもあと数日で終わろうとしていた日、新宿の地下道を歩いていた私は置いてあった観光パンフレットに強く惹かれ持ち帰ったのでした。 パンフレットの表紙は美しい山の写真でした。 そこが長野県の八方尾根だと知って、夢中で読んだのでした。 数枚の綴りになっていて、アクセスなども地図で詳しく紹介してあり、 二十歳の誕生日をそこで迎えられたらと思うとわくわくしました。 「行こう!」と思うともう止まらない。 載っていた山荘に電話すると予約は簡単に出来てしまいました。 旅立ちの前日の夜支度をしているところへ、たまたま仲良しの友達Mさんから電話。 「明日山に行く」と話すと、「私も行きたい」という。 すぐ、山荘に電話すると大丈夫との返事。 かくして私達は、翌日にはリュックを担いで山にいたのでした。 今思えば、私も彼女もちょっと変わってましたね。 八方尾根の八方山荘は山男やスキー客用の山荘でした。 そりゃそうだ、こんな高地に普通の旅館が在る分けないのでした。 そんなことも知らずにやって来たのでした。 着いたその日、宿泊客は私達だけ。 予約が簡単に取れたわけです。 山荘には若いお兄さんが一人。 今夜は他に客が居ないから何処でも好きなところに泊まって良いと言う。 私達は大はしゃぎで山荘の中を歩き回った。 大きな部屋は、左右の壁に二段ベットがダァ~~~ッと並んでいた。 私達は一番奥左側の二段ベットを選んだのでした。 下がMさん、上が私。 その夜はお兄さんが作ってくれた料理で二十歳の誕生日の宴。 食後も食堂のバー・カウンターに腰掛け、三人で夜の更けるまで話続けた。 何を話したか今は思い出せないけど、お兄さんの話は楽しくて、私達は笑ってばかり。 外に出ると、夜空は満天の星。 翌日の午後、静かな山荘は一変。 アマチュアカメラマンの団体で溢れかえったのでした。 私達は仲良しになったおじさんに写真をいっぱい撮ってもらったのでした。 お陰で思い出いっぱいの二十歳の記念アルバムを創ることができたのでした。 ほんとについてたなぁ。 八方尾根の八方山には小さな八方池。 唐松岳の頂上はすぐ其処にあり、間近に白馬山が聳え、アルプスの山々が雲海の中に浮かび、美しい光景が広がっていました。 あの山荘はどうなっているのだろう、お兄さんはまだ居るのかなぁと思う。 もうかなりのお爺さんになったでしょうね。 でもきっと心はあの頃と同じにピュアだよね。 私がそうであるように。(^-^) 「行きたい」と思い、迷うことなく直ぐに行動した恐いもの知らずの若さが、今は懐かしく愛おしいなぁ。
by danri
| 2006-01-11 00:57
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